自転車の運転を規制する法令としては、道路交通法、各都道府県の公安委員会規則(大阪府道路交通規則など)、刑法などがあります。道路交通法や公安委員会規則に違反した場合、罰則の定めがあるものとないものがありますが、刑法では必ず罰則が設けられています。
道路交通法では、「車両」についての規制は、自動車だけでなく原則として自転車にも及びます。自転車は軽車両の一種とされているからです。もっとも、「軽車両を除く」とかっこ書きされていることも少なくありませんが、その場合は自転車への適用はなく、もっぱら自動車や原付などが規制を受けることになります。
なお、自転車には自動車と違って反則金制度(青切符)がありません。摘発を受けると赤切符が交付され、刑事裁判を受けることになります。
○飲酒運転(65Ⅰ)
自転車の飲酒運転は、自動車と同様、5年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。酒に酔って正常な運転ができないおそれがある場合が対象となります。これに当てはまらない酒気帯び運転は、禁止されてはいるものの、自動車と違って(呼気中のアルコール保有量にかかわらず)罰則の定めはありません。(117の2①、117の2の2①)
○救護義務違反(72Ⅰ)
交通事故に関わる自転車の運転者は、自動車の場合と同様、負傷者を救護する義務を負います。この義務に違反すると、1年以下の懲役または10万円以下の罰金に処せられます(117の5①)。自動車と比べて刑が軽くなっています(117Ⅰ)。
○夜間灯火点灯義務違反(52Ⅰ、道路交通法施行令18Ⅰ⑤)
これに違反すると、自動車と同様、5万円以下の罰金に処せられます(120Ⅰ⑤)。ここで夜間とは、日没から日の出までの時間をいいます。自転車の灯火についての具体的な定めは、各都道府県の公安委員会規則(交通規則)に委任されています。たとえば大阪府では、前照灯については前方10メートルの障害物を確認できること、尾灯(一定の条件を備えた反射器などでもよい)については後方100メートルから点灯を確認できることが必要とされています(大阪府道路交通規則10)。
※ 点滅式の前照灯がこの義務に違反するかどうかについては、Q&AのQ05_05を参照して下さい。
○信号無視(7)
信号無視をした自転車は、自動車と同様、3月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられます(119Ⅰ①の2)。なお、歩行者にも罰則規定がありますが、自動車や自転車より刑が軽くなっていて、2万円以下の罰金または科料に留まります(121Ⅰ①)。
○制動装置不良自転車の運転(63の9Ⅰ、道路交通法施行規則9の3)
制動装置(ブレーキ)不良のため危険を生じさせるおそれのある自転車を運転すると、5万円以下の罰金に処せられます(120Ⅰ⑧の2)。自動車とは別に規定されていて、自動車より刑が軽くなっています。
具体的には、前輪及び後輪の両方にブレーキが付けられている必要があります。また、ブレーキの性能としては、時速10キロのスピードでブレーキをかけたときに、3メートル以内(雨天時に制動距離が多少長くなるのは構いません)でスムーズに停止できなければなりません。
近年警察による取締りが強化されてきた、ブレーキのないピスト(もともと競輪用の自転車で、ペダルを逆回転させて減速します)などの運転は、この規定に違反することになります。
○歩道走行(17Ⅰ)
自転車は原則として車道を走行すべきものとされています。例外として歩道を走行できるのは、標識によって走行が許容されている場合、子供や高齢者が運転する場合などに限られています(※1)。これらの例外に当てはまらないのに歩道を走行した場合は、通行区分違反として自動車と同様、3月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられます(119Ⅰ②の2)。
なお、例外的に歩道を走行できる場合についても、走行方法について規制があり(63の4Ⅱ、※2)、これに違反すると2万円以下の罰金または科料に処せられます(121Ⅰ⑤)。
※1 どのような場合に歩道を走行できるかについて詳しくは、Q&AのQ05_02を参照してください。
※2 詳しい規制の内容については、Q&AのQ05_04を参照してください。
○二人乗り(57Ⅱ)
道路交通法は、自転車の乗車人員に関する規制を設けるかどうか、またその内容について各都道府県の公安委員会規則に委任しています。たとえば大阪府では、2輪の自転車の二人乗りを原則として禁止しており(大阪府道路交通規則11①本文)、これに違反すると2万円以下の罰金または科料に処せられます(121Ⅰ⑦)。
例外は、幼児を乗せる場合だけが認められています。具体的には、16歳以上の運転者が6歳未満の幼児1人を幼児用座席に乗せる場合、16歳以上の運転者が6歳未満の幼児2人を幼児2人同乗用自転車の幼児用座席に乗せる場合などです(大阪府道路交通規則11①但書)。
なお、自動車の乗車人員については、自転車とは別に規定されており(57Ⅰ)、違反した場合の罰則も自転車より重くなっています(5万円以下の罰金、120Ⅰ⑩の2)。
○傘を差しながらの運転、携帯電話でメールや通話をしながらの自転車の運転、ヘッドホンなどを使って大音量で音楽を聞きながらの運転(71⑥)
道路交通法は、傘を差しながらの運転などを規制するかどうか、またその内容について各都道府県の公安委員会規則に委任しています。たとえば大阪府では、表記のような運転が禁止されており(大阪府道路交通規則13)、これに違反すると5万円以下の罰金に処せられます(120Ⅰ⑨)。
なお、携帯電話でメールや通話をしながらの自動車の運転については、自転車とは別に道路交通法に直接定められていて(71⑤の5)、自転車より刑が重くなっています(3月以下の懲役または5万円以下の罰金、119⑨の3)。
○過失致死傷(209、210)
自転車の運転者が、過失によって他人に傷害を負わせた場合は、30万円以下の罰金または科料に、人を死亡させた場合は、50万円以下の罰金に処せられます。重大な過失によって他人を死傷させた場合は、刑が加重され、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処せられます(重過失致死傷211I)。これらは、自転車事故に限らず、過失によって他人を死傷させた場合の一般的な規定です。
なお、自動車の運転者が過失によって他人を死傷させた場合については、過失の軽重にかかわらず、従来業務上過失致死傷罪(211I)が適用され、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処せられていました。ところが、平成19年の刑法改正による自動車運転過失致死傷罪(211II)の新設後は、同条項により、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処せられることになりました。一般の過失致死傷罪と比べて格段に重い刑罰が科されるのは、交通事犯に対する厳罰化の要請によるものです。自転車事故が社会問題化する中で、今後自転車運転者についても、一般の場合と異なる重い刑罰が規定される可能性は十分考えられます。
○危険運転致死傷(208の2)
自動車の飲酒運転などが原因となって他人を死傷させた場合は、15年以下の懲役(傷害の場合)または1年以上20年以下の懲役(死亡の場合)に処せられます。主体は自動車の運転者に限られるので、自転車の運転者が同様の行為を行っても適用されず、せいぜい前記の重過失致死傷罪が問題となるに過ぎません。